当社企業集団では、平成14年2月に策定した中期事業計画「Profit 計画」に取り組み、利益確保の面で一定の成果を収めてきた。しかしながら、建設投資のさらなる縮小に加え、資産デフレが続くなかでの減損会計の導入等による企業評価の厳格化など、建設業を取巻く環境は益々厳しさを増している。
このような事業環境の変化に対応し当社企業集団は、健全で自立した企業への再生を図るには、建設事業と不動産事業という異なるリスクが内在する事業を分離し、有利子負債を抜本的に削減するなどの思い切った事業構造改革が必要不可欠であると判断、本年3月に新たな中期事業計画『新Profit 計画』を策定した。
当社の対処すべき課題としては、本計画に基づき、10月1日を期日とする会社分割を計画どおり実施すること。当社(現・東急建設)および『東急建設』の商号と「企業理念・ビジョン」を引き継ぐ建設事業会社(新・東急建設)については、新たな上場継続会社を目指すとともに、従来の「Profit計画」における基本戦略をさらに強化・推進し、企業価値の向上ならびに株主価値の最大化を図ること。不動産事業会社については不動産事業に特化し、減損会計への対応を今期末に実施するとともに、資産売却の早期実現を目指すことにある。
なお、建設事業会社ならびに不動産事業会社の経営方針、指標等は以下のとおりである。
建設事業会社の経営方針
1.基本戦略
○ 環境の変化を先取りした建設事業の収益構造改革による企業再生(健全で自立した企業へ)
2.基本方針
○ 平成15年10月1日の東京証券取引所への上場を目指す
○ キャッシュフロー経営のさらなる推進を図る
○ 建設業本業で企業価値の最大化を図る
3.目標とする指標
○ 配当開始予定 平成17年3月期の利益処分により配当可能
○ 売上高経常利益率 4.0%以上
○ 営業キャッシュフロー 計画3ヶ年平均100億円以上
○ インタレスト・ガバレッジ・レシオ 15倍以上
○ 有利子負債のキャッシュフローに対する比率 1以下
(国土交通省基準)
不動産事業会社の経営方針
1.減損会計への早期対応(平成16年3月期に約1,000億円の含み損処理)
2.保有不動産の早期売却による借入金の返済
3.関連事業会社の整理・再編
当社は、平成15年5月27日開催の取締役会において、建設事業部門の会社分割に係る分割契約書の締結を決議し、平成15年6月25日開催の定時株主総会において承認を受けた。
詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等及び2.財務諸表等」の重要な後発事象に記載している。
[建設事業]
研究開発活動については、受注確保と施工品質向上のため、集合住宅建設技術や都市型鉄道整備技術、環境技術等の建築、土木部門の基幹技術を重点的に実施している。併せて技能工不足、施工の安全性向上のための施工合理化、機械化技術に関する研究開発、既存ストックの長寿化を促進する調査、診断、補修、補強、監視を含む維持管理技術に関する研究開発、土壌、地下水浄化や建設副産物のリサイクル、さらには屋上緑化等の環境技術の開発、普及等に取り組んでいる。また、当社は東急グループの中核企業として関連企業のノウハウや機能を効率的に結びつけ、ITによるネットワーク対応マンションをはじめ、ソフト、ハードにわたり企画、技術提案力の向上に努めている。また、当社独自の企画、設計、施工による省エネ型環境共生住宅を竣功させ、これからの住宅のあり方を具体的に提案している。さらに、大学、公共研究機関、関連企業等との共同研究を進め、研究開発の効率を高めている。
当連結会計年度における研究開発費は、773百万円である。
主な研究開発成果は次のとおりである。
(1)土木構造物リニューアル
トンネルや高架橋等のコンクリート構造物の調査、診断、補修及び補強技術の開発を実施した。その一例として、トンネル背面の空洞充填技術の開発(材料の開発、日本道路公団規格の充填実験)がある。さらに、これらをデータベース化して最適な構造物の維持管理システムとして各方面に提案し、営業展開を図っている。特に、地下構造物の補修、止水工法として開発した高圧注入止水工法は、その有効性が確認され、多数の施工実績をあげている。また、トンネル背面空洞充填技術は、地下工場跡の埋戻し工事に採用された。
(2)プレハブ複合構造橋脚
高さ30m以上の高橋脚の耐震性の向上、施工の合理化及びコストダウンを図るため、国土交通省土木研究所及び㈶先端建設技術センターと共同でプレハブ複合構造について研究を行い、3H工法(Hybrid Hollow High-pier)を開発した。本工法を初めて適用した平成10年度試験フィールド事業「鹿児島3号飯牟礼2号橋下部工工事(平成12年9月竣功)」に続き、平成13年3月に「鹿児島3号八房橋下部工工事」を受注し、工期短縮、省人化などの成果を確認した。平成13年11月には「建設技術展2001近畿」開発技術発表会において優秀発表賞(道路部門)を受賞し、平成14年度から複数の次期工事設計支援を行っている。
(3)インターロッキング配筋型橋脚
鉄筋コンクリート橋脚の横拘束筋の合理化により、施工性及び経済性を向上させる工法として、日本道路公団試験研究所と共同で実用化を図った。本工法は道路橋示方書にも紹介されており、営業展開を実施している。現在施工中の物件も含め、2件の施工実績を有する。さらに、独立行政法人土木研究所と共同研究を実施しており、用途拡大を図る。
(4)土壌、地下水汚染対策技術
土壌汚染対策法が施行され、当社の営業対象、受注物件でも土壌、地下水汚染に係わる対応が急増している。このため調査、対策の実務体制を整備した。また、調査、対策技術として、簡易サンプリング技術、難揮発性有機化合物汚染水の浄化技術、土壌洗浄技術等の開発を進めている。
(5)廃棄物処分場
近年、廃棄物処分場不足が顕著となり、処分場新設が急務となってきている。受注増加に向けた研究開発として、廃棄物処分場における浸出水漏水検知方法として光ファイバを用いた検知システム、廃棄物処分場計画地に最適な遮水構造を開発している。また処分場の安定化促進に関する研究を行っている。
(6)高機能住宅実験施設の建設及び実験施設における外断熱、高性能床等の実証実験
平成13年竣功の外断熱工法を採用した住宅の長期計測(1年間)をもとに、当工法を用いた 次世代型住宅の省エネルギー効果(全エネルギー消費量35%減)を確認した。第6回環境、省エネルギー住宅賞では当住宅が優秀賞を受賞した。
その成果を受け当社技術研究所に、当社の主力分野である集合住宅の快適性と省エネ性を同時に推進する新技術の実証実験の場として総合実験棟を建設し、迅速なる研究開発と商品化を進め、受注拡大を目指している。
(7)現場コンクリートの品質向上、高強度コンクリート、再生骨材コンクリートに関する研究
電子レンジ法による単位水量の管理の厳格化を進めるとともに、コンクリートマニュアルの改定を行い、現場コンクリートの品質向上を図っている。
再生骨材コンクリートの構造体(杭、耐圧盤、基礎、基礎梁)利用については、当社技術研究所総合実験棟建設工事の基礎部に再生骨材コンクリートを採用した。また、生コン業者と共同で一般認定を申請し、大臣認定取得の見込となった。さらに、国土交通省のグリーン調達品にも指定され、今後の市場拡大を目指し開発を進めている。
(8)高次診断、改修提案支援システムの開発
建物診断システムをイントラ上に公開し、簡単な建物診断が誰でもできるようにした。また、仕上げタイルの剥離や欠損の枚数が認識できる外壁診断システムを開発し、今後、受注の拡大を目指し、外壁診断システムと積算システムとの連係を図り、見積業務の精度及び速度向上を進め、建物診断システムと合せ改修提案システムとして確立を目指している。
(9)Pca手前アンカー工法
実験の結果、従来の8割程度の定着長でも本工法が設計可能となった。その結果をもとに、接合部剪断耐力式を既往の式から合理的なものに改良し、アルス港島中町新築工事(大阪支店施工)でセンター評定を受けた。中低層建物では、有効な差別化技術であるため、今後一般評定取得に向けて開発を進める。
(10)屋上緑化技術の実用化
当社の屋上緑化技術は、リサイクル品等の環境配慮型資材を用いて、昆虫や水生小動物が生育できる環境を構築した屋上緑化技術として、国土交通省のグリーン調達品にも指定された。今後の市場拡大に備え、資料等の充実も図っている。
(11)基礎VE設計システムの開発
杭断面設計システムの改良を進め、地盤の非線形性を考慮した、建物−全杭の一貫計算を可能とした。また、現場施工へのVE提案力向上を目指し社内ネットワーク対応型の計測管理システムの構築を完了し、7物件に適用した。
(12)煙突内壁レンガ解体技術
ダイオキシン類対策特別措置法により、需要が見込める焼却施設解体工事においては、周辺環境及び作業従事者へのダイオキシン類暴露防止が必要である。解体対象煙突にみられる内壁耐火レンガを遠隔操縦により解体し、ダイオキシン類暴露防止と作業の安全性向上、効率化を目的とする「煙突内壁レンガ解体装置」を開発中である。
(13)人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発
経済産業省の産業科学技術研究開発制度に基づく研究開発プロジェクトであり、新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)からの研究委託により平成12年度から平成14年度にかけて実施した。産業車両等代行運転の応用開発分野に参画し、車両の振動や衝撃からロボットを守る保護シートや雨の中でもロボット作業が行える保護ウェアなどを開発した。
(14)壁面施工自動化技術
タンク等鋼構造物用に開発中の塗膜剥離装置及び塗装装置を応用してパイプ状鋼構造物の塗装工事自動化システムを開発し、工事を受注、平成15年1月より3月にかけて施工した。また当該システムで完成したドラム回転式3種ケレン技術を適用し、タンク塗り替えのテスト施工を行った。
なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われていない。
[不動産事業等]
研究開発活動は、特段行われていない。