3 【対処すべき課題】

当社企業集団では、当連結会計年度を最終年度とする3ヵ年の「経営再建計画」により、建設事業による健全な企業経営の実現に取り組んできた。しかしながら、予測を超えた建設市場の縮小に対し、工事受注額は計画を上回ったものの、民間建築工事の価格競争の激化により、収益構造の改革は所期の目標を達成できなかった。また、計画策定後の時価会計導入により欠損金が累増し、再建計画において前提とした特定建設業許可の更新(本年7月)が困難となり、加えて経営環境の変化に備えた財務基盤の強化が必要不可欠な状況となっていた。

そこで、当社企業集団はこれらの状況を打開し、建設業界の再編淘汰に勝ち残ることを目的に、平成14年度を初年度とする3ヵ年の「再生計画(Profit計画)」を策定した。

本計画は「事業再生計画」「財務基盤再生計画」の二つの基本計画からなり、このうち「事業再生計画」では基本戦略を「建築事業の収益構造改革による企業再生」として、以下の個別戦略を実施することで業績の回復を図る。

1.建築事業の首都圏への集中

2.ロイヤルカスタマーへの営業力強化

3.選別受注の強化による低採算工事の徹底排除

4.調達・見積・VE機能を統合したコストセンターによるミニマムコストの実現

5.交通関連および都市再生事業の積極的推進

6.当社施工物件が豊富で優位性を確保できるリニューアル事業への本格参入

7.徹底したスリム化・効率化によるコスト削減

8.建設ソリューションサービス(PM、CM、FM、PFI等)を目指すための礎づくり

また、「財務基盤再生計画」では500億円の第三者割当増資(本年3月に実施済み)により将来の経営環境の変化に備え、法定準備金の取り崩しと株式数の減少を伴わない減資を行うことで、特定建設業許可の更新基準をクリアするとともに累積欠損金を一掃する。さらに、計画期間中に保有株式・不動産を売却し、増資資金と併せて有利子負債の一層の削減をめざす。

 

4 【経営上の重要な契約等】

特記事項なし。

 

5 【研究開発活動】

[建設事業]

研究開発活動については、受注確保と施工品質向上のため、集合住宅建設技術や都市型鉄道整備技術、環境技術等の建築・土木部門の基幹技術を重点的に実施している。合わせて技能工不足・施工の安全性向上のための施工合理化・機械化技術に関する研究開発、既存ストックの長寿化を促進する調査・診断・補修・補強・監視を含む維持管理技術に関する研究開発、土壌・地下水浄化や建設副産物のリサイクル、さらには屋上緑化等の環境技術の開発・普及等に取り組んでいる。また、当社は東急グループの中核企業として関連企業のノウハウや機能を効率的に結びつけ、ITによるネットワーク対応マンションをはじめ、ソフト・ハードにわたり企画・技術提案力の向上に努めている。平成13年8月には当社独自の企画・設計・施工による省エネ型環境共生住宅を竣功させ、これからの住宅のあり方を具体的に提案している。さらに、大学、公共研究機関、関連企業等との共同研究を進め、研究開発の効率を高めている。

当連結会計年度における研究開発費は、917百万円である。

 

主な研究開発成果は次のとおりである。

 

(1)土木構造物リニューアル

トンネルや高架橋等のコンクリート構造物の調査、診断、補修および補強技術の開発を実施した。さらに、これらをデータベース化して最適な構造物の維持管理システムとして各方面に提案し、営業展開を図っている。特に、地下構造物の補修・止水工法として開発した高圧注入止水工法は、その有効性が確認され、多数の施工実績をあげている。

(2)大深度地下の開発

「大深度地下使用法」が平成13年に施行された。また、内閣の推進している「都市再生」の実現には、大深度地下の活用が必須である。当社は、平成元年から深度50m規模の大深度地下実験場を構築し、設計・施工に関わる技術から安全性や快適性等の環境技術まで、地下空間における多方面の技術を、開発、実証してきた。今後は建設業として唯一構築している地下空間実験場をさらに活用した研究開発を行い、大深度地下事業に関連する受注拡大を図る。

(3)プレハブ複合構造橋脚

高さ30m以上の高橋脚の耐震性の向上、施工の合理化及びコストダウンを図るため、国土交通省土木研究所及びE先端建設技術センターと共同でプレハブ複合構造について研究を行い、3H工法(Hybrid Hollow High-pier)を開発した。本工法を初めて適用した平成10年度試験フィールド事業「鹿児島3号飯牟礼2号橋下部工工事(平成12年9月竣功)」に続き,平成13年3月に「鹿児島3号八房橋下部工工事」を受注し、工期短縮、省人化などの成果をあげている。平成13年11月には「建設技術2001近畿」開発技術発表会において優秀発表賞(道路部門)を受賞した。

(4)インターロッキング配筋型橋脚

鉄筋コンクリート橋脚の横拘束筋の合理化により、施工性及び経済性を向上させる工法として、日本道路公団試験研究所と共同で実用化を図った。道路橋示方書に取り入れられ、営業展開を実施している。さらに、独立行政法人土木研究所と共同研究を実施し、用途拡大を図る。

(5)アクアトラップ(雨水貯留浸透施設を構築するプラスチック製充填体)

地下に雨水の貯留・浸透槽を簡易に構築する工法として、A雨水貯留浸透技術協会の技術認定を取得し、すでに15,000を超える受注実績がある(平成14年3月現在)。国土交通省京浜工事事務所とA雨水貯留浸透技術協会主催の市民向け展示スペース(新横浜住宅公園内)において雨水利用システムを展示しており、雨水利用という新たな方向にも用途拡大を図る。

(6)テラポンド工法(貯留雨水給水型緑化システム)

技術研究所屋上における実験では、長期間の給水機能が実証された。またアクアトラップと同様の展示スペースにおいて展示を行っており、東京都の屋上緑化義務付けなどの規制を追い風に、今後屋上や高架上下などの都市内の未緑化部分における適用を推進していく。

(7)土壌・地下水汚染対策技術

当社の営業対象・受注物件でも土壌・地下水汚染の恐れがある物件や判明した例が増えている。これに対応するため調査・予測から対策選定、設計・施工を通してコンサルティングできる体制を整備した。また、対策技術として重金属不溶化技術、揚水・吸引による地下水・土壌ガス浄化技術、地下水シミュレーション技術の開発を進めている。

(8)廃棄物処分場

近年、廃棄物処分場不足が顕著となり、処分場新設が急務となってきている。受注増加に向けた研究開発として、廃棄物処分場における浸出水漏水検知方法として光ファイバを用いた検知システム、廃棄物処分場計画地に最適な遮水構造を開発している。また離島及び沿岸域部を対象としたクローズドシステム型処分場の構築技術の開発を行っている。

(9)SI住宅施工技術

SI住宅施工技術の開発成果に基づき、SIマンションの施工を実施した。民間としては最も早い施工事例となっている。

(10)環境共生住宅の設計・施工技術

省エネ、CO2削減、長寿命化に有効な環境技術・建築技術を用いたRC外断熱省エネ健康住宅(戸建て)を企画・設計・施工した。この住宅には最近注目されている外断熱工法が採用されている。竣功後のモニタリングによりこの住宅の省エネ効果が確認されている。

(11)既存建築物の耐震補強技術

粘弾性ダンパーを用いた居ながら耐震補強工事を事務所ビルに実施した。また、開発したPCa増設耐震壁工法を各種補強工事に技術提案している。

(12)集合住宅高遮音内装システム

開発した集合住宅用高遮音内装システムを実施物件に適用した。このシステムは、乾式で工期短縮が可能で、従来の工事に比べて低コストを実現している。新築だけでなくリフォームにも適用でき、用途により部分施工にも対応できる。

(13)制振装置の開発

高層建築物の風揺れ対策として有効なTMDタイプの制振装置を開発した。この装置は受動型に能動型を併用できるハイブリット型であり、ダンパーや制御方法に独自の技術を用いている。この装置が設置された超高層建築物(セルリアンタワー)が昨年竣功した。実測により制振効果を確認している。

(14)送電線電磁障害対策技術

送電線の近くに建つビルや集合住宅の磁場障害対策技術に関して、屋上に磁気シールド材を敷設する技術を確立した。また、多くの対策を実施した。

(15)電磁波探査技術

専門スタッフによる「テクノ探査事業チーム」を結成し、鉄道トンネルの断面計測および覆工背面調査を行った。また建築リニューアル工事に対応するため、コンクリート内部に敷設されたケーブル位置を調査する実証実験を行い、百貨店改装工事等に適用した。

(16)壁面施工自動化技術

タンク等の鋼構造物の塗り替え工事を機械化し、施工の効率化を図るため、塗膜剥離装置および塗装装置を開発中である。平成13年6月および11月に実証実験を実施し、機能・性能の検証を行った。実用化へ向け装置の改良を実施中である。

(17)施工技術の情報化・合理化

道路工事、造成工事等において重機の走行軌跡を自動計測し、盛土の締固め管理を行う「盛土施工管理システム」を改良して実用性を高めた。国土交通省関東地方整備局の試験フィールド事業(スーパー堤防)で採用された。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われていない。

 

[不動産事業等]

研究開発活動は、特段行われていない。